背景と課題
日本各地で建物の老朽化が進み、工場のスレート屋根やビル屋上のコンクリート基材が劣化し、防水性能の低下が深刻な問題となっています。既存の防水層(アスファルト防水やウレタン塗膜防水など)は、経年とともにひび割れや剥離が発生し、雨水が内部に侵入するリスクが高まります。
屋上からの漏水は単なる雨漏りにとどまらず、コンクリート内部の鉄筋腐食や爆裂を引き起こし、建物の構造を弱体化させます。その結果、耐震性が低下し、大地震時には倒壊の危険性すら生じます。実際、長期間雨漏りを放置した建物では、柱や梁の鉄筋が錆びて断面欠損が進行し、構造耐力が半減、最終的に建て替えを余儀なくされた事例も報告されています。
さらに漏水は衛生環境にも悪影響を及ぼします。浸水した断熱材や内装材にカビが発生し、室内空気を汚染して居住者の健康被害(カビ臭やアレルギーなど)を引き起こします。また、水濡れによる電気系統のショートやエレベーターの故障など、安全面での重大リスクも発生します。加えて、漏水シミや悪臭によるテナント退去、資産価値の低下といった経済的損失も無視できません。
このように屋上防水の劣化を放置することは、構造的・衛生的・経済的に重大な問題を引き起こすため、早急な対策が不可欠です。実際に自治体や各省庁では公共施設の長寿命化や維持管理コスト削減が求められており、民間企業においても資産価値の維持や事業継続計画(BCP)の観点から、防水対策の強化が強く求められています。